映画「ドラゴンボール EVOLUTION」を観てきたけど、酷評するほどでもないと思う。よくもないけど……

脚本やキャラクター作りは原作者としては「えっ?」って感じではありますが、
監督さんや俳優の皆さん、スタッフなど、現場は超優秀な人達ばかりです。
ボクやファンの皆さんは別次元の『新ドラゴンボール』として鑑賞するのが正解かもしれません。
もしかしたら現場のパワーで大傑作になっているかもしれませんよ!
おおいに期待しています!!


原作者 鳥山明


映画の前評判がかなりひどい状態で、この鳥山明のコメントをしばらく前に読んだときは、原作者もあきれるほど駄作になっているんだろうなと思いました。
漫画原作のテレビドラマで原作者が怒りだして、原作者としてのクレジットを拒否したり、ドラマに否定的なコメントをしたり、作品内で自虐的なギャグにしたりといったことがある中、鳥山明のコメントは実に大人なコメントだと感銘しました。*1


ジャンプで連載中からリアルタイムで原作のコミックを読んでいたし、アニメ*2も観ていたので、酷評されている部分に共感はします。
でも、ハリウッド映画だと思って観れば、別にそんなにひどい映画ではないと思います。
お金を払って観に行く価値があるのかと聞かれたら困るなあという程度の内容であるのは認めますけどね。
個人的には観て損をしたとは思いませんでした。


原作との設定の違いを色々と取り上げ、だから駄目だと言っている感想がありますが、そんなことはハリウッド映画になったら変更されるに決まっているんです。
海外に輸出されたアニメや特撮がどのような扱いを受けてきたのか*3を知っていれば、「ああ、また改悪されたよ……」という程度じゃないのかな?
大体、漫画、アニメ、ゲームが実写化されて成功した作品ってあるの?って聞かれて答えれる作品名が片手の指の数以上あるとは思えません。


映画を観終わった直後に書き殴ったネタばれにはならない感想の部分をまず、書きます。


ハリウッド映画として観ると駄作だとか思うことなく、普通に観る事ができた。
内容的には、所々おかしな点があるなあとは思ったが、作品の良し悪し(ストーリ的な部分)には関係がなく、無視すれば大丈夫だった。


ドラゴンボール初期*4の雰囲気が感じられたので、アニメ版ドラゴンボールZと比較すると失敗作として感じると思う。
ストーリーの内容はいわゆるオーソドックスなハリウッド映画そのものであり、ドラゴンボールというタイトルではなく、ドラゴンボールにインスパイアされたファンタジーアジアンカンフー映画として観れば、何らかの賞を取ることはできないだろうが、それなりに面白い映画であった。


登場人物の設定が変更されている点は、確かに原作を知っていると面白いものではないし、改悪したと思える。
しかし、これはハリウッド映画であるという前提で観ればそれは変更されて当たり前の部分であり、原作のままではハリウッド映画ではなくなってしまう。


もし、ドラゴンボールの映画だと期待して観たら、罵詈雑言の嵐を書いたかもしれない。
たとえ、映画の出来が良くても悪くても。



以下、ネタばれの感想になります。
まだ、映画を劇場に観に行くつもりだったり、内容を知りたくない人は見ないことをオススメします。






















では、見終わった直後に書いたネタばれ有りの感想を書きます。




まず、悟空がピッコロの手下であったという点が原作と違う。
それ以前に、高校生であるという時点ですでに原作とは違うが……
大猿も原作のような巨大な猿ではなくゴリラ的な大猿であった。
確かに大猿には違いないから間違いではないけどね。


ブルマとヤムチャはほぼ(初期の)原作通りだと感じた。


悟空が高校生活をしているシーンは原作の後半で、悟飯がハイスクールに通う話の部分を思い起こされた。
映画で(じいちゃんの方の)悟飯のケンカをしてはいけないという教えを守っているため、いじめにあっても反撃しないので、臆病者だと思われている設定は、その後いじめっ子を手を出すことなく叩きのめした時の爽快感を感じるために必要であり、物語を作る場合はごく当たり前の手法である。


チチと悟空のラブストーリーの部分は、ハリウッド映画にはラブストーリーが必須事項であるから、個人的にないほうがいいとは思うが、あって当たり前と受け取ると気にしなくて済む。*5


ヤムチャとブルマのラブストーリーの部分は原作にもあるのでこちらはOKである(というか、キスシーンが無かった*6のがちょっと意外だった、逆に悟空とチチは2回もキスシーンがある)


亀仙人がスケベであるという設定はそのままであったが、さすがに原作そのままではセクハラすぎて無理だったのであろう。露骨なシーンはなく、それとなく表現されているだけだった。
グラビア雑誌を大切にしているところと、バイクに乗る時、ブルマの後ろにまたがり、変なところを触らないように注意されるところだけ。


ピッコロの扱いは、まあ、よくいる悪者の大ボス的な感じで、原作とは微妙にずれを感じたくらいだった。
ピッコロの手下の女は原作のピラフ大王の手下の女だったのかどうかが、いまいちよくわからなかった。
ただ、このキャラがいる事でストーリーが上手くまとまっている*7気がするので映画としてはアリだと思う。


映画の時間を短くするために編集で飛ばされているシーンがあるように感じられた。
ヤムチャがいつの間にか世界が滅亡するかもという事情を知っているところとか。


原作を再現しようとがんばっている部分はもちろんあり、「気」「魔封波」「かめはめ波」など日本語をそのまま使用している点は原作に対する敬意を感じた。
ハリウッド的にやるなら「気」=「フォース」とかやってもおかしくはない。
「気」に関する説明が、自身の内部の力ではなく世界中の力を集めて体の中に入れるという点は、原作の元気玉、もしくは一般的な気*8そのものであり、ドラゴンボール的には違うのではないかと思った。


カプセルホイホイの再現は上手いと思ったし、終盤それを戦闘シーンに組み込んだのはよかった。


シナリオには無理を感じず、ハリウッド映画のお手本*9のような感じだなあと思った。
チチの腕の傷などの扱い方などは観ていてすぐに先の展開を予想できたが、それはお約束ごとをひねることなく扱っているわけであり、わかりやすくて実にハリウッド映画的である。


全体的にお金を払って損をしたとは思うことなく観終わったが、物足りなかったのは悟空とピッコロの戦闘シーンが思ったよりも短く、あっさりと決着がついてしまったことである。


ラスト、チチと悟空がどちらが強いのかを確認する為に戦おうとしたところでエンドロールに入るのは上手いと思った。
その後、続編を匂わせるシーンは予想の範囲内であったが、このレベルで続編が作られるのであれば観てもいいと思った。


挨拶が「ナマステ」のところはちょっと勘弁と思ったが、この程度はまあハリウッド映画だから許容範囲内である*10


事前に原作者である鳥山明の「別次元の〜」というコメントがあったから割り切って、いちハリウッド映画として観たのでこの感想である。

*1:こんなコメントの仕方があるんだと感心もしました。

*2:GTになってからはほとんど観ていませんでしたが……

*3:宇宙戦艦ヤマトとかパワーレンジャーとかジブリ作品とか色々あるし、改変されていない作品の方が圧倒的に少ないと思います。

*4:コミックの1巻から最初の神龍を呼び出す辺りまで

*5:チチが悟空に好意を持っているという描写程度がいいと個人的には思った

*6:キスする直前で邪魔が入ったのでできなかった

*7:ハリウッド映画的に

*8:中国の気功

*9:ハリウッド映画のシナリオは娯楽を追及しているため細かな矛盾点を無視することがあるので、映画シナリオのお手本となるわけではない

*10:そう思わないと観ていられなかった